- ひとりの男子中学生が、北朝鮮籍の女子がいじめられているのを止めに入り、それをきっかけにしてありとあらゆる手段を弄されていじめまくられる。そして家から金を盗んでくることを強要されるに及んで、死を決意する。もちろん自分の死がいじめられたことによることを知らせるために、いじめた連中、彼らの親、学校、教育関係者に凄まじい遺書を送りつけて家を出る。しかし、生きていて無様なのに死んだ後も無様な格好を見られたくないという思いで、ネットで死の場所を探し続け、山奥の崖っぷちを探し出した。そこから飛び降りて深い谷底に叩きつけられれば、すぐさま人に発見されることも無く、白骨化することで屋上から飛び降りて見せるような無様で悲しい骸になることは避けられる。それが彼の最後の望みで、崖に辿り着いて、谷底に向けて、生きている最後の一歩を踏み出そうとする。そして……。いじめ、それは想像力を養わなかった戦後教育の成果である。
合わせ鏡|伊吹龍彦|明窓出版
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