- 「まぁええか」呟くほどにまたひとつ失うものが増えてゆきたり
わが手より三歩駆け出し待っている自動改札茶色い切符
他の星へ移り住まんとなる時は歌人はきっと最後のロケット
下を向き咲く花なれば下手より撮れば真直ぐに我を見つめる
捕まえたと我は思っているけれど「捕まってみた」この犬の眼は
たそがれの電車の響きは繰り返す「なに言うてんねん、なに言うてんねん」
読みながら私が感じたのは、面白いなあということだった。実は現代の短歌に最も欠けている一つは面白さではあるまいか。……言葉本来の意味の面白さをもつ歌集ははなはだ少ないように思われる。『鯨の祖先』を読むと、われわれは何かしら目の前が明るくなり、心はゆったりとして開放感を味わうのである。
鯨の祖先|武富純一|ながらみ書房
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- 鯨の祖先
Ⅰ
チリチリと…
漕ぎ続けろ!
冷茶を注ぐ
迷いを捨てに
雨の休日
元気ないぞ
レイラ
消えたつめ切り
時間をつまむ
Ⅱ
エンジンわれは
大阪の街
ほうき草
電車の響き
沈黙の時
イルカ気分で
東京
義母逝きて
鯨の祖先
Ⅲ
あいうえお
あかさたな
「の」の連続
いのちかけるか?
河馬の選択
離陸ポイント
コスモス
遠き対岸
Ⅳ
もうええわい
淡路島水仙郷
りんご売場
神と宇宙と
断裂
ご飯やで
五月の光
跋 伊藤一彦
あとがき
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