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核融合のためのプラズマ物理

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核融合のためのプラズマ物理

宮本健郎

出版社:
サイエンス・カルチャー出版
判型:
A5変判
ページ数:
461ページ
発行日:
2017/03/01 
対応端末:
PC, iPhone, iPad, Android, Tablet

PC版:ストリーミング対応
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 新しいエネルギー源として核融合反応を応用し発展させようとする世界的な規模の研究が始まってから既に半世紀が過ぎようとしている.そしてITER と呼ばれる国際トカマク実験炉の建設段階がようやく始まった.
 この教科書の主な目的は,核融合に関連するプラズマ物理および核融合研究の最近の状況を大学院生および専門課程の大学生に紹介することにある.またこの分野の研究者にとっても有用な参照資料になることも期待している.
 この教科書は二つの編から成り立っている.最初の編では核融合研究に密接に関連しているプラズマ物理の課題を記述している.

第1章ではプラズマの基礎的な概念を述べる.第2章では種々の磁場配位におけるイオン,電子の運動を解析する. 第3章から第7章まではプラズマを電磁流体として記述する.第3章では電磁流体力学運動方程式,第4章ではプラズマの平衡,第5章ではプラズマの閉じ込め(理想的な場合)を取り扱う.第6章,第7章で扱う電磁流体力学的不安定性,抵抗不安定性は閉じ込めたプラズマのベーター比の上限を与える.新古典ティアリングモード,抵抗性壁モードは第7章で解説する.

 第8章から第13章まではプラズマを運動論的に取り扱う.第8章で扱うボルマン方程式およびブラゾフ方程式は運動論および電磁流体力学の基礎となるものである.波あるいは擾乱が伝播する媒質としてのプラズマは,一般的に不均一で,非等方的である.
 第9章で述べる冷たいプラズマモデルは,プラズマ粒子(イオンあるいは電子)の熱速度が波の伝搬位相速度より十分小さい場合に適用できる.その解析の簡単さから冷たいプラズマの誘電率テンサーは容易に導くことができ,種々の波の性質を調べることができる.もし媒質の屈折率が大きくなり,或いはプラズマが高温になると,波のの位相速度と熱いプラズマ粒子の熱速度が同じ程度になる.その場合,波と粒子との間でエネルギーのやり取りが行われるようになる.

 第10章ではまず,プラズマの最も基本的な協同的現象であるランダウ減衰(増幅),サイクロトロン減衰(増幅)について述べ,熱いプラズマの誘電率テンサーを導く.そして分散関係からドリフト不安定性などの速度空間不安定性についても若干ふれる.
 第11章では波動加熱(波の減衰)および非誘導電流駆動について記述する.波動加熱や中性粒子入射はイオンや電子を加熱する有効な手段である.プラズマ電流の非誘導電流駆動は,ブートストラップ電流と組み合わせて,トカマクの定常運転に欠かせない機構である.
 第12章では高エネルギー粒子によって励起される不安定性の中で代表的なフィッシボン不安定性,トロイダルアルフベン不安定性について記述する.炉心プラズマの核融合反応で生成されるアルファ粒子による不安定性の抑制は,アルファ粒子そのもの損失を防ぐうえで重要である.
 第13章では乱流によるプラズマ輸送を議論する.ドリフト乱流によって引き起こされるプラズマの損失は,磁場配位によりボーム型になったり,ジャイロボーム型になったりする.またプラズマの複雑な非線形現象でもある,乱流によるプラズマ輸送はを理解するために,計算機シミュレーションの役割は近年益々重要になってきた.ジャイロ運動論的粒子モデルや完全軌道粒子モデルを紹介する.また最近ドリフト乱流によりプラズマ中に帯状流が作られることが実験によって確認された.帯状流の発生,減衰機構の理解が進めば,閉じ込め改善に向かういくつかのルートが発見されるかも知れない.これらの新しいトピックスも13章に記述する.

 第14章から第19章までの後半第2編では,核融合の種々の分野における最新の研究を記述する.第14章では核融合を目指した高温プラズマ閉じ込め研究の発展を解説する.
 第15章で述べる トカマク は最も活発に研究され,成果をあげているので,詳しく説明している.電磁流体力学的(MHD)不安定性, Lモード,Hモードのエネルギー閉じ込め時間の実験的比例則,定常運転などの重要な課題を説明している.ITER計画の目的,その根拠に触れる.
 第16章の逆転磁場ピンチ(RFP)では,MHD緩和の現象,パルス的平行電流駆動(PPCD),電流分布制御による閉じ込め特性の改善などを述べる.
 第17章のステラレーターにおいては,最新の実験結果や準対称ステラレーターの研究を,
 第18章の開放端系ではミラー,カスプ,タンデムミラーを紹介する.
 第19章の慣性閉じ込めでは高速点火を紹介する.

 読者はこの教科書には数式が多過ぎるという印象をもたれるかもしれないが,論文内容を理解するために数式の演繹に費やす時間を節約できる効果を期待するからである.この教科書は,核融合に密接に関連しているプラズマ物理の重要な課題を総合的かつ簡潔に説明し,核融合研究の興味ある最新の研究をくわしく紹介することを心懸けた.

核融合のためのプラズマ物理|宮本健郎サイエンス・カルチャー出版


まえがき
第1章 プラズマとは  1
1.1 はじめに       1
1.2 電気的中性およびランダウ減衰         2
1.3 核融合炉心プラズマ          4
第2章 種々の磁場配位における荷電粒子の軌道   11
2.1 荷電粒子の軌道          11
2.2 スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル       18
2.3 磁気ミラー           20
2.4 トーラス系            22
2.5 クーロン衝突,中性粒子入射           37
2.6 プラズマ現象の時間および空間スケール           43
第3章 電磁流体力学 45
3.1 二流体電磁流体力学運動方程式              45
3.2 一流体電磁流体力学運動方程式              47
3.3 簡単化された電磁流体力学運動方程式           49
3.4 磁気音波 51
第4章 平衡 55
4.1 圧力平衡         55
4.2 Grad-Shafranovの平衡方程式         56
4.3 Grad-Shafranovの平衡方程式の厳密解         58
4.4 トカマクの平衡          61
4.5 ベーター値の上限         67
4.6 Pfirsch-Schluter電流            68
4.7 Virial定理          71
第5章 プラズマの閉じ込め(理想的な場合) 75
5.1 衝突頻度の大きい場合の拡散        77
5.2 トカマクにおける衝突頻度の小さい場合の拡散       80
5.3 ブートストラップ電流        82
第6章 電磁流体力学的不安定性             85
6.1 交換不安定性           86
6.2 電磁流体力学的(MHD)不安定性の公式化           92
6.3 表面電流構成における円柱プラズマの不安定性        96
6.4 エネルギー原理           100
6.5 分布電流構成における円柱プラズマの不安定性        103
6.6 Hain-Lustの電磁流体運動方程式             111
6.7 バルーニング不安定性            113
6.8 密度勾配と温度勾配がある場合のeta_ iモード       117
第7章 抵抗不安定性             121
7.1 ティアリング不安定性               121
7.2 新古典ティアリング不安定性               127
7.3 抵抗性ドリフト不安定性               134
7.4 抵抗性壁モード                   137
第8章 ボルツマン方程式         145
8.1 位相空間と分布関数           145
8.2 ボルツマン方程式およびブラゾフ方程式           146
8.3 フォッカー・プランクの衝突項           148
8.4 準線形理論による分布関数の変化           150
第9章 冷たいプラズマの波         153
9.1 冷たいプラズマの誘電テンサー         153
9.2 波の諸性質         157
9.3 2成分プラズマの波         159
9.4 種々の波         163
第10章 熱いプラズマの波     171
10.1 ランダウ減衰,サイクロトロン減衰       171
10.2 熱いプラズマにおける分散関係の公式化       177
10.3 線形化ブラゾフ方程式の解       179
10.4 熱いプラズマの誘電テンサー        180
10.5 二重マクスウェル分布プラズマの誘電テンサー       183
10.6 プラズマ分散関数       185
10.7 静電波の分散式        188
10.8 不均一プラズマにおける静電波の分散関係        189
10.9 速度空間不安定性        193
第11章 波動加熱および非誘導電流駆動   195
11.1 エネルギーの流れ         195
11.2 光線追跡         199
11.3 熱いプラズマの誘電率テンサーおよび波の吸収        200
11.4 イオン・サイクロトロン周波数領域の波動加熱(ICRF)     205
11.5 低域混成波加熱(LHH)       209
11.6 電子サイクロトロン加熱(ECH)       212
11.7 低域混成電流駆動(LHCD)        214
11.8 電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)        218
11.9 中性粒子電流駆動(NBCD)        221
第12章 高エネルギー粒子による不安定性 225
12.1 フィシュボン不安定性      225
12.2 トロイダルアルフベン固有モード 233
12.3 種々のアルフベンモード      245
第13章 乱流によるプラズマ輸送 249
13.1 揺動損失,ボーム,ジャイロボーム拡散,対流損失 249
13.2 磁気揺動による損失       254
13.3 輸送の次元解析       255
13.4 ジャイロ運動論的粒子モデルと完全軌道粒子モデルによる
計算機シミュレイション 261
13.5 帯状流       269
第14章 核融合研究の発展        285
第15章 トカマク          295
15.1 トカマク装置            295
15.2 平衡プラズマ位置の安定性            300
15.3 MHD安定性および密度上限           304
15.4 縦長断面プラズマのMHD安定なベータ上限         307
15.5 不純物制御,スクレイプ オフ層,ダイバーター        309
15.6 Lモードの閉じ込め比例則           315
15.7 Hモードおよび閉じ込め改善モード            317
15.8 定常運転            325
15.9 トカマク実験炉のパラメーター            328
15.10 先進的トカマクへの試み           340
第16章 逆転磁場ピンチ(RFP)          343
16.1 RFP配位           343
16.2 テイラーの緩和理論            343
16.3 MHD緩和過程           346
16.4 RFPの閉じ込め            352
第17章 ステラレーター             357
17.1 ヘリカル磁場           357
17.2 ステラレーター装置            361
17.3 ステラレーター磁場における新古典拡散           363
17.4 ステラレータの閉じ込め            368
17.5 準対称ステラレーター            371
17.6 ステラレーター炉の概念設計           374
第18章 開放端系          375
18.1 ミラーおよびカスプの閉じ込め時間            375
18.2 ミラーの閉じ込め実験            377
18.3 ミラーにおける不安定性            377
18.4 タンデム・ミラー           380
第19章 慣性閉じ込め            391
19.1 ペレット利得            391
19.2 爆縮            395
19.3 電磁流体不安定性            398
19.4 高速点火            401
付録A MHD運動方程式の導入          405
付録B 軸対称トーラス系のエネルギー積分            409
B.1 解釈しやすい形のエネルギー積分            409
B.2 軸対称トーラス系のエネルギー積分           411
B.3 高nバルーニングモードのエネルギー積分          416
付録C 準対称ステラレーター           419
C.1 磁気座標系と自然座標系          419
C.2 ドリフト運動のBoozer方程式          422
参考文献               427
物理定数,プラズマパラメーター,数学公式           443
索引          447

エネルギーのサイエンス



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